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見し人も宿も煙になりにしを
何とてわが身消え残りけむ

歌の意味
連れ添った人も住まいも煙になってしまったのに、どうして私の身だけが消えずに残ったのだろう。
鑑賞
第三部 橋姫

 京の邸が火事で焼け、八の宮は姫君たちを連れて宇治の山荘へ移ることになる。北の方をすでに火葬の煙に送り、いままた住み慣れた邸をも炎に失って、川音の絶えぬ宇治で詠まれたのがこの歌である。この転居によって物語の舞台は宇治に定まり、以後の宇治十帖が動き出す。

 「見し人」は亡き北の方を、「宿」は焼けた京の邸を指す。火葬の煙と火事の煙とが「煙」の一語で重ねられ、二つの喪失が一つに結ばれている。「消え残る」は煙や露が消えずに残る意で、自分だけが生き残ったことをいう。宇治への移住が、都から遠ざかる下降として、また死に近づく歩みとして印象づけられている。

見し人:連れ添った人。ここでは亡き北の方。

宿:住まい。邸。

煙:火葬の煙。ここでは火事の煙も掛かる。

消え残る:消えずに残る。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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