世を厭ふ心は山にかよへども
八重立つ雲を君や隔つる
- 歌の意味
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俗世を厭う気持ちはそちらの山に通っているのに、幾重にも立つ雲であなたが私を隔てているのだろうか。
- 鑑賞
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第三部 橋姫
八の宮の仏道への打ち込みぶりが都にも聞こえ、冷泉院が消息とともに贈った歌である。院もまた世を捨てたい心を抱きながら果たせずにいる立場であり、宇治にこもる宮への共感と、便りの絶えがちなことへの恨みとを一首に込めている。八の宮はこれに返歌し、都と宇治とをつなぐ細い交わりが示される。
「世を厭ふ」は出家遁世の志をいう常套句である。「山」は八の宮のこもる宇治山を指す。「八重立つ雲」は幾重にも重なる雲で、都と山里との隔たりを示すと同時に、宮の側が心を閉ざしているのではないかという疑いを含ませる。院の側から差し向けられた歌であることが、世に忘れられたはずの八の宮になお高貴な交友の残ることを示している。
厭ふ:嫌って離れようとする。
かよふ:通じる。行き来する。
八重:幾重にも重なるさま。
隔つ:間に置いてさえぎる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- 前の歌
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見し人も宿も煙になりにしを 何とてわが身消え残りけむ
- 次の歌
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あと絶えて心澄むとはなけれども 世を宇治山に宿をこそ借れ