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さしかへる宇治の川長朝夕の
しづくや袖を朽たしはつらむ

歌の意味
棹をさして行き来する宇治川の渡し守は、朝も夕も雫に濡れて、袖をすっかり朽ちさせてしまっているのだろう。
鑑賞
第三部 橋姫

 薫の「橋姫」の歌に対する大君の返しである。相手が棹の雫を持ち出したのに応じて、その棹をさして毎日川を渡る渡し守のことを詠む。自分たち姉妹の身を渡し守になぞらえ、絶えず涙に濡れている境涯を、直接には言わずに示している。

 「川長」は渡し守のこと。「さしかへる」は棹をさして行き来する意で、相手の「棹」を受け継いでいる。「朽たす」は濡らして朽ちさせるで、涙に濡れつづける袖をいう常套表現である。一時の同情を述べた薫に対し、こちらは朝夕絶えることのない嘆きだと返しており、宇治の姫君たちの日常の重さが伝わってくる。

さしかへる:棹をさして行き来する。

川長:川の渡し守。

しづく:滴り落ちる水。

朽たす:濡らして朽ちさせる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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