- 歌の意味
- 命があったなら、我が子だと思って見ることもできただろう。人知れず岩根に残しておいた松が生い立っていく、その行く末を。
- 鑑賞
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第三部 橋姫
弁から託された文の束の最後にあった歌で、柏木が生まれたばかりの子の行く末を思って書き残したものである。薫はこれを読み、自分が光源氏の子ではないという疑いをはっきりと知る。しかし母女三の宮を訪ねても、無心に経を読む尼姿を前にして問いただすことができず、秘密は薫ひとりの胸に抱え込まれる。
「岩根にとめし松」は薫自身のたとえで、人知れず残された子を岩の根に生えた松に重ねている。松は長寿を予祝する木であり、その成長を見届けられない父の無念が対比によって強められる。「それとも見まし」は反実仮想で、生きていたならという叶わぬ願いを表す。宇治十帖の主人公が自らの出生の証しとしてこの一首を読む場面であり、巻の締めくくりにふさわしい重みを持つ。
命あらば:命があったならば。
それとも:それだと。我が子だと。
岩根:岩の根もと。
生ひ末:成長していく先。行く末。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌