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遠方こちの汀に波は隔つとも
なほ吹きかよへ宇治の川風

歌の意味
あちらとこちらの岸辺を波が隔てているとしても、やはり吹き通ってきてほしい、宇治の川風よ。
鑑賞
第三部 椎本

 八の宮の歌に対し、薫に代わって匂宮が返した歌である。相手の詠んだ「遠方」を受けて「遠方こち」と広げ、川を隔てていても交わりを絶やさぬようにと述べる。かねて宇治の姫君たちに関心を寄せていた匂宮にとって、この返歌が宇治へ近づく最初の一歩となった。

 「汀」は水際。「波は隔つとも」は相手の「白波」を受けている。「吹きかよへ」は命令形で、風に託して便りの行き来を願う型である。相手が隔たりを嘆いたのに対し、こちらは隔たりを認めたうえでなお交わりを求めており、贈答の呼吸がよく整っている。以後、匂宮はしばしば宇治へ歌を贈るようになる。

をちこち:遠くと近く。あちらとこちら。

汀:水際。岸辺。

かよふ:行き来する。

川風:川の上を吹く風。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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