- 歌の意味
- 私が亡くなって草の庵は荒れ果ててしまっても、この一つの約束だけは絶えないでほしいと思う。
- 鑑賞
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第三部 椎本
夏、八の宮は自らの死期が近いことを悟り、宇治を訪れた薫に姫君たちの後見を頼む。娘たちを見捨てないでほしいという一言を託したうえで詠まれたのがこの歌である。薫はこれに返して約束し、宮はまもなく山寺で亡くなる。この託孤の場面が、以後の宇治十帖全体を規定していくことになる。
「草の庵」は宇治の山荘を指し、粗末な仮住まいの意を含む。「このひとこと」の「こと」には「琴」が掛かり、「かれじ」は「枯れじ」と「離れじ」を掛ける。庵は荒れても約束は枯れないという対比が、草と枯るの縁語によって支えられている。父が娘を託す言葉が、そのまま薫を宇治へ縛りつける鎖となる点に、この巻の重みがある。
草の庵:草ぶきの粗末な住まい。
ひとこと:一つの言葉。「一琴」を掛ける。
かる:枯れる。離れる。
荒る:荒れ果てる。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌