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朝霧に友まどはせる鹿の音を
おほかたにやはあはれとも聞く

歌の意味
朝霧の中で友を見失った鹿の声を、ありふれたものとしてしみじみ聞いていられるだろうか。
鑑賞
第三部 椎本

 大君の返歌をさらに受けて、匂宮が贈った歌である。鹿の声をありきたりの秋の風物としては聞き流せないと述べ、弔問の言葉を重ねている。この贈答を通じて匂宮は宇治との縁を保ち続け、やがて中の君との関係へと進んでいくことになる。

 「友まどはせる鹿」は連れを見失った鹿で、父を失った姉妹の姿を重ねる。「おほかたにやは」は反語で、世間なみに聞き流せようかの意である。前の歌の「鹿」をそのまま引き継ぎながら、相手の悲しみに自分も加わるという形に導いている。弔意を述べつつ関係を深めていく、匂宮の巧みな詠みぶりが見える一首。

朝霧:朝に立ちこめる霧。

まどはす:見失う。はぐれさせる。

音:鳴き声。

おほかた:世間なみ。ありふれたさま。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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