- 歌の意味
- せめて奥山の松葉に積もる雪とだけでも、亡くなった父上を思うことができたならよかったのに。
- 鑑賞
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第三部 椎本
姉の歌に対する中の君の返しである。雪ならばまた降り積もるが、人は二度と帰らないという思いを込める。姉妹二人の唱和は、父を失った後の宇治の暮らしがどれほど心細いものかを静かに伝えており、この後、雪を分けて訪れる薫の場面へと続いていく。
「雪とだに」は、せめて雪とだけでもの意である。「ましかば」は反実仮想で、そうであったならという叶わぬ願いを表す。雪は消えてもまた降るのに対し、人は消えたきり戻らない。「消ゆ」は雪の縁語であり、その語を人の死に重ねることで、自然の循環と人の一度きりの死とが鋭く対比されている。
奥山:人里離れた深い山。
だに:せめて…だけでも。
消ゆ:雪が消える。人が亡くなる。
ましかば:…であったならば。反実仮想。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌