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つてに見し宿の桜をこの春は
霞隔てず折りてかざさむ

歌の意味
人づてに見ただけだったお宅の桜を、今年の春は霞に隔てられることなく、手折って挿頭にしたい。
鑑賞
第三部 椎本

 春になり、匂宮が中の君に贈った歌である。去年の春は初瀬詣の帰りに通りすがりに眺めただけだったが、今年は直接訪ねたいという。積極的な求愛の意を含んでおり、これに中の君が返す。匂宮と中の君との関係は、この春を境に一段と近づいていくことになる。

 「つてに見し」は人づてに、またはついでに見たの意で、前年の桜の贈答を踏まえる。「霞隔てず」は隔てるものなく直接にの意である。「折りてかざさむ」は花を手折って挿頭にすることで、女性と契りを結ぶ意を暗示する常套表現である。前年の遠慮がちな挨拶から一歩踏み出した詠みぶりに、匂宮の性急さがあらわれている。

つて:人づて。ついで。

宿:住まい。お宅。

霞:春に立ちこめる霞。

かざす:髪や冠に挿す。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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