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いづことか尋ねて折らむ墨染に
霞みこめたる宿の桜を

歌の意味
どこと思って訪ねて手折るのだろう。墨染の色に霞みこめられている、この家の桜を。
鑑賞
第三部 椎本

 匂宮の桜の歌に対する中の君の返しである。姉妹はまだ父の喪に服しており、花を楽しむような心境ではないと述べて、匂宮の申し出をやんわりと退けている。この贈答をもって椎本の巻は閉じられ、物語は総角の巻へと引き継がれていく。

 「墨染」は喪服の色で、その色に霞んでいるという言い方によって、服喪中であることを示す。「霞みこめたる」は霞が一面に立ちこめている意で、相手の「霞隔てず」を受けつつ、隔てているのは霞ではなく喪であると返している。「折らむ」を反語の形で受け止めており、拒みながらも角の立たない、中の君らしい返歌になっている。

いづことか:どこと思って。

墨染:喪服の黒。

霞みこむ:霞が一面に立ちこめる。

宿:住まい。わが家。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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