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隔てなき心ばかりは通ふとも
馴れし袖とはかけじとぞ思ふ

歌の意味
隔てのない心だけは通い合うとしても、馴れ親しんだ仲だとはおっしゃらないでほしいと思う。
鑑賞
第三部 総角

 薫の歌に対する大君の返しである。心を許した相手であることは認めながら、男女の仲としては認めないと明確に線を引いている。この応酬の後も薫は諦めず、大君の心労はしだいに深まって、やがて病へとつながっていく。

 「隔てなき心」は打ち解けた気持ちのこと。「馴れし袖」は相手の「馴れきとは」を受け、衣の縁語である「袖」に置き換えている。「かけじ」は口に出すまいの意で、相手の「かけずしもあらじ」を反転させた形である。相手の語をことごとく受け取りながら意味を逆にする、贈答としての完成度の高い一首。

隔てなし:へだたりがない。打ち解けている。

通ふ:通じ合う。

馴る:親しくなる。

かく:言葉に出す。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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