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いつぞやも花の盛りに一目見し
木のもとさへや秋は寂しき

歌の意味
いつだったか花の盛りに一目見た木のもとまでも、秋は寂しく感じられることだ。
鑑賞
第三部 総角

 匂宮が紅葉狩と称して宇治へ出かけ、供の公達が唱和した五首のうちの一首である。宰相の中将は夕霧の子で、かつて春の桜を見た記憶と、いま目の前にある秋の景とを重ねている。華やかな遊宴の裏で、匂宮は姫君たちのもとへ寄ることも許されずにいた。

 「木のもと」に「子」を響かせ、父を失った姫君たちを暗に指すとみる説がある。「いつぞやも」は以前いつかの意で、椎本巻の春の桜の場面を思い起こさせる。同じ場所を春と秋とで対比する型であり、この後に続く四首とともに、宇治の山荘を遠くから眺める都人の視線を形づくっている。

いつぞや:以前のいつか。

花の盛り:桜の満開のころ。

木のもと:木の根もと。「子」を響かせる。

さへ:…までも。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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