古典和歌stream

秋はてて寂しさまさる木のもとを
吹きな過ぐしそ峰の松風

歌の意味
秋が終わって寂しさの増す木のもとを、吹き過ぎていかないでほしい、峰の松風よ。
鑑賞
第三部 総角

 紅葉狩の唱和の最後を締めくくる匂宮の歌である。姫君たちのもとへ寄ることを供の者に阻まれ、山荘を素通りするほかなかった無念が込められている。この一件によって大君は匂宮の誠意を疑い、妹の行く末への不安から病に伏していくことになる。

 「木のもと」に「子」を掛け、宇治の姫君たちを指す。「吹きな過ぐしそ」は吹き過ぎるなという禁止で、自分が素通りせざるを得なかった悔しさを風に託している。松風は山里の寂しさを代表する景物であり、華やかな唱和の締めくくりに置かれることで、この後の暗転をあらかじめ告げている。

秋はつ:秋が終わる。

木のもと:木の根もと。「子」を掛ける。

な…そ:…するな。禁止。

松風:松に吹く風。
作者
紫式部
出典
源氏物語
その他の歌