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恋ひわびて死ぬる薬のゆかしきに
雪の山にや跡を消なまし

歌の意味
恋いわびて死ぬための薬がほしいので、雪の山に入って行方をくらましてしまおうか。
鑑賞
第三部 総角

 大君の死を悼む薫の独詠のうち、もっとも切迫した一首である。喪失の痛みに耐えかね、いっそ姿を消してしまいたいと詠んでいる。この絶望が薫を出家へ傾かせる一方で、後に大君に似た浮舟を求める心へとつながっていくことにもなる。

 「死ぬる薬」は不死の薬に対する言い方で、死をもたらす薬という発想の反転が印象的である。「ゆかし」は知りたい、手に入れたいの意。「雪の山に跡を消す」は雪山に入って消息を絶つことで、雪と消ゆの縁語による。恋の嘆きの型を用いながら、その先に出家や失踪という現実的な選択が透けて見える。

恋ひわぶ:恋しさに思い悩む。

ゆかし:見たい。手に入れたい。

跡を消す:行方をくらます。

なまし:…してしまおうか。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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