君にとてあまたの春を摘みしかば
常を忘れぬ初蕨なり
- 歌の意味
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亡き宮様に差し上げようと幾年もの春ごとに摘んできたので、今年も例年どおりの初蕨である。
- 鑑賞
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第三部 早蕨
宇治の山里にまた春がめぐってきた。前の年の秋に姉の大君を亡くし、その前には父の八の宮も失って、中の君は宇治の山荘にただ一人残されていた。八の宮の仏道の師であった宇治山の阿闍梨からは、例年と同じように蕨や土筆を入れた籠が届けられ、この歌が添えられていた。中の君は、亡き父を今も忘れずにいる阿闍梨の心づくしに涙をこぼし、女房に言葉を書き取らせて返歌を送る。
「君」は亡き八の宮を指す。「あまたの春」は幾年もの春で、毎年欠かさず届けてきた長い歳月をいう。「摘み」には「積み」が掛かり、年を積み重ねてきた意を響かせる。「常を忘れぬ」は例年どおりを守るということで、主を失ってもなお変わらない山寺の心遣いを表す。飾らない詠みぶりがかえって誠実さを伝え、宇治十帖の春の巻の口開けとしてよく働いている。
君:あなた。ここでは亡き八の宮。
あまた:たくさん。多くの。
摘む:摘み取る。「積む」を掛ける。
常:いつものこと。例年どおり。
初蕨:その春はじめて芽を出した蕨。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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