この春は誰れにか見せむ亡き人の
かたみに摘める峰の早蕨
- 歌の意味
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今年の春は誰に見せればよいのだろう。亡き人の形見として摘んでくださった峰の早蕨を。
- 鑑賞
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第三部 早蕨
阿闍梨から届いた蕨の籠と歌を前にして、中の君が返した歌である。去年までは姉の大君と二人でこの初物を受け、父の仏前に供えていた。その姉ももういない今、見せる相手がいないという嘆きがそのまま言葉になっている。中の君は自分の筆では書かず、女房に言葉を書き取らせて返した。この一首が巻名「早蕨」の由来であり、宇治に一人残された中の君の孤独を印象づける歌として知られている。
「亡き人」は父八の宮と姉大君の双方に重ねて読める。「かたみ」は思い出の品である「形見」と、竹で編んだ籠を意味する「筐」の掛詞で、贈られた籠そのものを言葉のうちに取り込んでいる。「峰の早蕨」は山寺のある峰で摘まれた蕨のこと。相手の「初蕨」を「早蕨」と言い換えて受け、季節の初物が形見に変わってしまったという転換を、ごく短い言葉で示している。
誰れにか:誰に。
亡き人:亡くなった人。父八の宮と姉大君を指す。
かたみ:形見。竹籠の「筐」を掛ける。
峰:山の高いところ。
早蕨:芽を出したばかりの蕨。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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