折る人の心にかよふ花なれや
色には出でず下に匂へる
- 歌の意味
-
折った人の心に通じている花なのだろうか。表の色には出さず、内に隠れて香っているのは。
- 鑑賞
-
第三部 早蕨
都では、匂宮が宇治通いの難しさから、中の君を京の二条院へ迎えることを決めていた。ある日、匂宮は庭の紅梅の枝を手折って薫に贈り、この歌を添える。薫が口には出さないまま中の君を慕っているのではないかと疑い、それを花の香になぞらえて探ったのである。薫はすぐに返して受け流すが、匂宮の疑いはこの後も消えず、後の巻で二人の間の緊張として繰り返しあらわれていく。
「折る人」は花を手折った者、すなわち薫を指す。「色には出でず下に匂へる」は、外に見える色は目立たないのに内側では強く香っているということで、表に出さない思いのたとえになっている。梅は色より香で賞される花であり、その性質がそのまま比喩として働いている。相手の内心を花に託して問う詠みぶりは軽やかだが、猜疑がのぞく点で、匂宮の性格をよく写している。
折る:手折る。
かよふ:通じる。
色に出づ:表情や態度にあらわれる。
下に:内側に。表に見えないところに。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-