- 歌の意味
- 花を見る人もいなくなるだろう、嵐に吹き乱される山里に、昔を思い出させる花の香が漂っている。
- 鑑賞
-
第三部 早蕨
上京の日が迫り、中の君は住み慣れた宇治の山荘を離れることになった。庭には、かつて姉の大君が愛でた紅梅が咲き、鴬が鳴いている。この花を見る者はもういなくなるという感慨を詠み、薫に贈ったのがこの歌である。薫はこれに返し、やがて宇治の山荘を寺に改めることまで考えるようになる。転居の前夜、二人は大君の思い出を夜更けまで語り合った。
「あらし」は嵐と、「あらじ」すなわち居るまいとの掛詞で、風に吹き乱される景と、見る人がいなくなるという嘆きとを一語で兼ねる。「昔おぼゆる花の香」は、姉と過ごした日々を思い出させる梅の香をいう。花は変わらず咲き香るのに、それを見る人だけが去っていくという構図が、宇治を離れる者の心細さをそのまま形にしている。
あらし:嵐。「あらじ(居るまい)」を掛ける。
まよふ:吹き乱される。
山里:山あいの里。ここでは宇治の山荘。
おぼゆる:思い出される。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌