- 歌の意味
- 誰もが急いで旅立とうと衣を裁っているところで、ただ一人涙に濡れている尼であることよ。
- 鑑賞
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第三部 早蕨
上京の当日、山荘では女房たちが都へ移る支度に追われ、装束を裁ち縫う手も忙しい。そのなかで弁の尼だけは宇治に残ることが決まっていた。中の君に差し出したのがこの歌である。中の君はこれに返して弁をいたわり、老女房を宇治に残して都へ向かうことになる。以後、宇治に残った弁は、薫と浮舟を結ぶ仲立ちとして重要な役目を担っていく。
掛詞を重ねた技巧的な一首である。「たつ」は旅立つの「発つ」と衣を裁つの「裁つ」、「浦」は「裏」、「海人」は「尼」を掛ける。「裏」「裁つ」は袖の縁語、「藻塩」「海人」は浦の縁語で、支度に追われる室内の景と、海辺で塩を焼く海人の姿とが二重に立ち上がる。言葉遊びに見えて、置かれていく者の寂しさがきちんと芯に据えられている。
いそぎたつ:急いで旅立つ。「裁つ」を掛ける。
袖の浦:袖の「裏」を掛ける。
藻塩を垂る:涙を流す。
海人:漁をする人。「尼」を掛ける。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌