塩垂るる海人の衣に異なれや
浮きたる波に濡るるわが袖
- 歌の意味
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涙に濡れる尼の衣と何が違うだろう。頼りない行く先を思って濡れている私の袖も同じことだ。
- 鑑賞
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第三部 早蕨
弁の尼の歌に対する中の君の返しである。残される者だけが悲しいのではなく、都へ向かう自分も心細さに濡れていると述べ、老女房をいたわっている。中の君は二月七日に二条院へ迎えられ、匂宮から手厚く扱われることになるが、この時点ではまだ都での身の上に自信を持てずにいる。その不安が、そのまま歌の下の句に表れている。
「塩垂るる海人の衣」は相手の詠んだ語をそのまま受けている。「異なれや」は反語で、違いはないという意である。「浮きたる波」は水面に浮く波で、「憂き」を掛け、定まらない行く末をいう。相手の技巧に技巧で応じながら、内容としては同情と自らの不安を並べており、都へ上る喜びよりも心細さが先に立つ中の君の心境が読み取れる。
塩垂る:涙に濡れる。
海人:漁をする人。「尼」を掛ける。
異なれや:違いがあろうか。反語。
浮きたる:水に浮いている。「憂き」を掛ける。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- 前の歌
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人はみないそぎたつめる袖の浦に 一人藻塩を垂るる海人かな
- 次の歌
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ありふればうれしき瀬にも逢ひけるを 身を宇治川に投げてましかば