古典和歌stream

霜にあへず枯れにし園の菊なれど
残りの色はあせずもあるかな

歌の意味
霜に耐えられずに枯れてしまった園の菊だが、残された色はあせていないことだ。
鑑賞
第三部 宿木

 薫の遠慮を受けて、今上帝が返した歌である。「園の菊」は亡くなった藤壺女御を、「残りの色」はその娘の女二の宮を指す。母を失っても娘の美しさは損なわれていないと述べ、遠慮は無用だと重ねて促している。この贈答によって縁組の話は動き出し、薫は翌年の二月に女二の宮を妻として迎えることになる。

 菊は霜に耐えて咲く花とされ、そこに耐えかねて枯れたと言うことで、女御の死の思いがけなさを示す。「残りの色」は残された花の色で、母に似た娘の美しさをいう。「あせずもあるかな」は色が褪せていないという感嘆で、娘を誇る父の言葉になっている。花の比喩を薫の歌から受け継ぎつつ、内容だけを打ち返す整った返歌である。

霜にあふ:霜に当たる。

園の菊:庭の菊。亡き藤壺女御のたとえ。

残りの色:残された花の色。女二の宮のたとえ。

あせず:色が褪せない。
作者
紫式部
出典
源氏物語
その他の歌