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山里の松の蔭にもかくばかり
身にしむ秋の風はなかりき

歌の意味
宇治の山里の松の蔭でも、これほど身にしみる秋の風は経験しなかった。
鑑賞
第三部 宿木

 匂宮が六の君と結ばれた夜、二条院に残された中の君は一睡もできずに夜を明かした。宇治の山里の暮らしは心細いものであったが、それでもこれほどつらい思いはしなかったと、ひとり詠んだのがこの歌である。以後、匂宮の訪れは絶えがちになり、中の君は宇治へ帰りたいとまで思うようになる。その心の隙に、薫が近づいてくることになる。

 「山里の松の蔭」は宇治の山荘の暮らしを指し、貧しくとも姉と父とともにあった日々をいう。「身にしむ秋の風」は身にこたえる秋風で、「秋」に「飽き」が掛かり、匂宮に飽きられたという恨みを含む。都に迎えられて幸せになったはずの身が、かえって宇治にいたころより苦しいという逆転が、この巻の中の君の造型を支えている。

山里:山あいの里。ここでは宇治の山荘。

松の蔭:松の木蔭。

かくばかり:これほどまでに。

身にしむ:身にこたえる。深く感じる。

秋:季節の秋。「飽き」を掛ける。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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