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うち渡し世に許しなき関川を
みなれそめけむ名こそ惜しけれ

歌の意味
見渡すかぎり世間に認められない仲なのに、たびたび逢っていると言われる評判が惜しまれる。
鑑賞
第三部 宿木

 薫のもとには、母女三の宮に仕える按察使の君という女房がいて、ひそかに通う相手となっていた。あるとき薫が早々に帰ろうとしたのを恨んで詠んだのがこの歌である。薫はこれに返して情はあると弁明するが、その心はもとより中の君にあり、この女房との仲は本気のものではない。中の君への思いを抑えかねる薫の姿が、こうした場面によって側面から描かれる。

 「関川」は逢坂の関を流れる川で、逢うことを連想させる歌枕である。「みなれ」は水に慣れる意の「水馴れ」と、たびたび顔を合わせる意の「見慣れ」を掛ける。「渡し」は川の縁語で、「塞き」が「関」に響く。認められない仲なのに噂だけが立つという嘆きは、身分の低い女房の立場をよく表しており、技巧の陰に切実さがある。

うち渡し:見渡して。全体にわたって。

関川:逢坂の関を流れる川。

みなれ:水馴れ。「見慣れ」を掛ける。

名:評判。噂。

惜し:惜しい。残念だ。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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