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宿り木と思ひ出でずは木のもとの
旅寝もいかにさびしからまし

歌の意味
昔泊まった宿だと思い出さなかったら、木のもとの旅寝はどれほど寂しかっただろう。
鑑賞
第三部 宿木

 薫は宇治を訪れ、八の宮の山荘を寺に改める相談を進めていた。荒れはじめた邸に泊まり、亡き八の宮と大君を思い出しながら、老女房の弁の尼に語りかけたのがこの歌である。弁の尼はこれに返して悲しみを述べる。この夜、弁は薫に、八の宮の落胤である浮舟という娘の存在を打ち明け、それが後の物語を大きく動かすことになる。

 「宿り木」は木に寄生する植物のことで、宿とする木、すなわち泊まる家の意を掛ける。この語が巻名「宿木」の由来となっている。「木のもとの旅寝」は木の根もとで寝る旅寝で、粗末な宿りをいう常套の言い方である。思い出があるからこそ寂しさが救われるという理屈で、荒れた邸に泊まる感慨を述べており、宇治十帖の中でもよく知られた一首である。

宿り木:木に寄生する植物。「宿とする木」を掛ける。

思ひ出づ:思い出す。

木のもと:木の根もと。

旅寝:旅先で寝ること。

からまし:…であっただろう。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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