- 歌の意味
- 穂に出さないまま物思いをしているようだ。招くように揺れる篠薄の袂には、露が多くおりている。
- 鑑賞
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第三部 宿木
二条院の庭の篠薄を眺めながら、匂宮が中の君に贈った歌である。六の君との結婚の後、匂宮の訪れは絶えがちであったが、それでも中の君への情は残っており、こうして機嫌をうかがう歌を寄せている。中の君はこれに返すが、宇治へ帰りたいという思いは消えず、後の巻ではその願いが浮舟の運命を左右することにもなる。
「穂に出でぬ」は穂を出していないことで、思いを表に出さないさまを掛ける。「篠薄」は細い薄で、風に揺れる姿を人が手招きするさまに見立てるのが常であった。「招く袂」はその葉を袂に見立てた言い方で、「露しげくして」が涙を暗示する。庭の草を通して相手の胸のうちを察するという型で、責めるでもなく詫びるでもない匂宮の中途な立場がよく出ている。
穂に出づ:穂を出す。思いを表に出す。
もの思ふ:思い悩む。
篠薄:細い薄。
招く:手招きする。
しげし:多い。密である。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌