しめ結ひし小萩が上も迷はぬに
いかなる露に映る下葉ぞ
- 歌の意味
-
標縄を張って囲っておいた小萩の上葉は乱れてもいないのに、どんな露のせいで色が変わってしまった下葉なのだろう。
- 鑑賞
-
第三部 東屋
浮舟には左近少将という求婚者があり、母の中将の君は縁組を喜んでいた。ところが少将は、浮舟が常陸介の実の娘ではなく継娘で、財産の後ろ盾がないと知ると、あっさり心変わりして常陸介の実の娘に乗り換えてしまう。裏切られた母がその不実を責めて贈ったのがこの歌である。この破談によって浮舟の身の置き所がなくなり、母は娘を二条院の中の君のもとへ預けることになる。
「しめ結ふ」は標縄を張って自分のものだと囲うことで、大切に育ててきた娘をいう。「小萩」は浮舟のたとえである。「露」は常陸介の実の娘を、「下葉」は少将を指す。上葉は乱れていないのに下葉だけが色を変えたという言い方で、相手の心変わりを責めている。萩と露という優美な景物を用いながら、内容は財産をめぐる生々しい非難である。
しめ結ふ:標縄を張って占有する。
小萩:萩の美称。ここでは浮舟のたとえ。
迷ふ:乱れる。
映る:色が変わる。「移る」とも表記。
下葉:下の方の葉。
- 作者
-
紫式部
- 出典
-
源氏物語
- その他の歌
-