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涙をもほどなき袖にせきかねて
いかに別れをとどむべき身ぞ

歌の意味
涙さえも狭い袖ではせき止めきれないのに、どうして別れを引き止められる身であろうか。
鑑賞
第三部 浮舟

 匂宮の歌に対する浮舟の返しである。涙さえ止められない自分に、まして人の出立を引き止める力などないと述べる。受領の継娘という身分ゆえに何ひとつ自分では決められない立場が、そのまま歌になっている。匂宮はこの返しにいっそう心を残しながら宇治を去り、浮舟は一人残されて、薫への後ろめたさに苦しむことになる。

 「ほどなき袖」は狭く小さい袖で、身分の低さと力のなさとをあわせて表す。「せきかぬ」はせき止めきれない意である。「とどむ」は引き止めることで、「せく」「とどむ」と、流れをせき止める語を重ねて一首をまとめている。涙も別れも自分の手には負えないという一点だけを述べており、浮舟という人物の受け身の性格がよく出ている。

ほどなし:狭い。小さい。

せきかぬ:せき止めきれない。

とどむ:引き止める。

身:わが身。身の上。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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