- 歌の意味
- 眺めやるそちらの方角の雲さえ見えないほど、空までも暗くなるこのころの心細さよ。
- 鑑賞
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第三部 浮舟
三月、春雨の降り続くころ、病から回復した匂宮が宇治の浮舟に贈った歌である。同じ日に薫からも文が届き、浮舟は二人の男に同時に返しを書かねばならなくなる。このころ薫は浮舟を京の新邸へ移す支度を進めており、匂宮もまたその前に自分のもとへ引き取ろうと言い出していて、浮舟は逃げ場を失っていく。
「眺めやる」は遠くを見やることで、物思いの意も含む。「そなたの雲」は相手のいる方角の雲で、離れた者が同じ空を見るという贈答歌の型を踏まえている。「空さへ暮るる」は空までも暗くなるということで、心の暗さが空にまで及んだと言う。長雨の季節を背景に置くことで、行き詰まっていく物語の空気がそのまま景色になっている。
眺めやる:遠くを見やる。物思いにふける。
そなた:そちらの方角。
さへ:…までも。
暮る:暗くなる。
わびし:心細い。つらい。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌