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水まさる遠方の里人いかならむ
晴れぬ長雨にかき暮らすころ

歌の意味
水かさの増す遠くの里に住む人はどうしているだろう。晴れることのない長雨に、暗く過ごしているこのごろは。
鑑賞
第三部 浮舟

 匂宮の文と同じころ、薫からも宇治へ届いた歌である。長雨で宇治川の水かさが増すのを案じ、遠く離れた地に置いた人を思いやっている。京の新邸の支度は進んでおり、薫は何も疑わずに浮舟を迎える日を待っていた。浮舟はこの二通を前にして返しを書き、その筆づかいのうちに追い詰められた心を漏らすことになる。

 「水まさる」は川の水かさが増すことで、のちの浮舟の返歌の「みかさまさりて」に受け継がれる。「遠方の里人」は遠く離れた土地に住む人で、宇治の浮舟を指す。「かき暮らす」は暗い気持ちで日を過ごす意である。落ち着いた気遣いの歌だが、その気遣いこそが相手の苦しみの因になっているという構図が、この巻の悲劇を形づくっている。

水まさる:川の水かさが増す。

遠方:遠く離れた所。

長雨:降り続く雨。

かき暮らす:暗い気持ちで日を過ごす。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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