古典和歌stream

後にまたあひ見むことを思はなむ
この世の夢に心惑はで

歌の意味
後の世でまた会えることを思っていてほしい。この世の夢のようなことに心を惑わせないで。
鑑賞
第三部 浮舟

 最後に母へ書き送った文に添えられた一首である。この世での再会は望めないと悟ったうえで、来世での再会を思っていてほしいと言い残している。母中将の君は、浮舟の生涯を通じて唯一その身を惜しんでくれる存在であり、その相手への別れの言葉として置かれている点が重い。この直後、浮舟は宇治川へ向かう。

 「後にまた」は後の世でふたたびの意で、来世での再会を願う仏教的な言い方である。「この世の夢」は夢のようにはかない現世をいう。「心惑はで」は心を乱さずにの意である。娘が母をなだめるという逆転した構図になっており、死を前にした者のほうが落ち着いているという点に、静かな悲しみがある。

後にまた:後の世でふたたび。

あひ見る:対面する。

この世の夢:夢のようにはかない現世。

心惑ふ:心が乱れる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
その他の歌