- 歌の意味
- 橘の薫るあたりでは、時鳥は気をつけて鳴くべきであった。
- 鑑賞
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第三部 蜻蛉
薫の橘の歌に対する匂宮の返しである。ちょうど中の君と二人で庭を眺めていた折で、匂宮は「意味ありげな文だ」と見てとり、この歌を書いて「わづらはし」と書き添えた。相手が事情を察していると気づいたうえでの返しであり、この後、匂宮は浮舟の最期を知る侍従を京へ呼び寄せ、一晩かけて詳しい話を聞くことになる。
「橘の薫るあたり」の「薫る」に薫の名を掛け、時鳥に自分を重ねている。橘のそばでは時鳥も気をつけて鳴くべきだった、というのは、あなたのそばでは軽々しく振る舞うべきではなかったという含みで、事実上の言い抜けであり、同時に自らの分の悪さを認めた言葉でもある。名を歌に詠み込んで応じる機知が、この二人らしい応酬になっている。
橘:五月に香る木。昔を偲ぶよすが。
薫る:香る。「薫」の名を掛ける。
ほととぎす:時鳥。
心す:気をつける。用心する。
べかりけれ:…すべきであった。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌