- 歌の意味
- 確かにいると見えたのに手には取れず、見ればまた行方も知れず消えてしまった蜻蛉であることよ。
- 鑑賞
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第三部 蜻蛉
秋の夕暮れ、薫はひとり物思いに沈み、宇治で出会った八の宮の三人の娘たちの運命を思い返す。恋しながら結ばれぬまま死なせた大君、匂宮に譲った中の君、そして行方も知れず消えた浮舟。目の前を飛ぶ蜻蛉を眺めながら口ずさんだのがこの独詠であり、この一首が巻名「蜻蛉」の由来となる。物語はここから、生きていた浮舟を描く手習の巻へと転じていく。
「蜻蛉」はカゲロウで、はかないものの代表として詠まれる。「ありと見て手にはとられず」は、確かにそこにいると見えたのに捉えられないということで、女君たちを追い続けてきた薫の生涯そのものを言い当てている。「消えし」は死をも暗示する。手に入らぬものばかりを求めてきたこの人物の造型が一首に凝縮されており、宇治十帖を代表する歌として知られる。
あり:存在する。
とる:手に取る。
行方も知らず:行き先もわからない。
蜻蛉:カゲロウ。はかないもののたとえ。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌