我かくて憂き世の中にめぐるとも
誰れかは知らむ月の都に
- 歌の意味
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私がこうしてつらい世の中をめぐり生きているとしても、月の都にいる人たちは誰が知ろうか。
- 鑑賞
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第三部 手習
意識を取り戻した浮舟は、五戒を受けて仏に頼ろうとするが、素性を明かすことは拒み続けた。小野の山荘は比叡山の麓にあり、都からは遠い。生きていることを誰にも知られたくないと願いながら、それでも都に残してきた人々を思う気持ちは断ちきれない。前の一首に続けて手習に書きつけられたのがこの歌である。以後、浮舟はこうして書きつける言葉のうちにのみ本心を漏らしていく。
「めぐる」は生きて世をめぐることで、月の運行にも掛かる。「月の都」は月の world をいう語だが、ここでは京の都を指し、竹取物語の趣を響かせる。生きているのに死んだことにされているという、この巻の浮舟の位置が端的に述べられている。誰にも知られたくないと言いながら、知られないことを嘆くようにも読める両義性が、この一首の陰影をつくっている。
かくて:このようにして。
憂き世:つらいこの世。
めぐる:めぐり生きる。月の運行にも掛かる。
月の都:月の世界。ここでは京の都。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- その他の歌
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