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移し植ゑて思ひ乱れぬ女郎花
憂き世を背く草の庵に

歌の意味
移し植えられて思い乱れることもない女郎花である。つらい世に背を向けた草の庵で。
鑑賞
第三部 手習

 中将の歌に対し、浮舟が返そうとしないため、妹尼が代わって詠んだ返歌である。この娘はすでに世を捨てた草の庵に移されて、心を乱すこともないのだと述べ、やんわりと申し出をかわしている。とはいえ妹尼自身は二人を結ばせたいと願っており、その後も中将の来訪を歓迎して、浮舟を困らせ続けることになる。

 「移し植ゑて」は花を移し植える意で、宇治から小野へ移された浮舟を指す。「思ひ乱れぬ」は心を乱さないの意である。「草の庵」は粗末な庵で、出家者の住まいをいう。相手の「女郎花」をそのまま受けながら、野の花ではなく庵の花なのだと言い換えており、求婚を退ける理屈が立てられている。

移し植う:別の場所に植え替える。

思ひ乱る:心が乱れる。

憂き世を背く:世を捨てる。出家する。

草の庵:草ぶきの粗末な住まい。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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