- 歌の意味
- 頼りなくこの世を過ごしてきて、あのつらい川瀬には、もう尋ねて行くまい。二本の杉のもとへは。
- 鑑賞
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第三部 手習
九月、妹尼はふたたび初瀬詣に出ることになり、浮舟にも同行を勧めた。だが浮舟にとって初瀬は、母とともに詣でた帰りに宇治で薫に見出された、あの日々につながる場所である。二度とあの道は行くまいという思いを込めて詠んだのがこの一首である。妹尼はこれに返して残念がり、浮舟を残して山を下りていく。
「古川」は初瀬川の古称である初瀬の古川で、「経る」を掛ける。「憂き瀬」はつらい川瀬で、「宇治」の「憂」を響かせる。「二本の杉」は初瀬の名所で、古今集の「初瀬川古川野辺に二本ある杉年を経てまたも逢ひ見む二本ある杉」を踏まえ、再会を願う場所として知られる。その再会をこそ拒むという逆転が、この歌の要である。
はかなし:頼りない。あっけない。
古川:初瀬の古川。「経る」を掛ける。
憂き瀬:つらい川瀬。「憂し」を響かせる。
二本の杉:初瀬の名所。再会を願う歌枕。
- 作者
- 紫式部
- 出典
- 源氏物語
- その他の歌