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憂きものと思ひも知らで過ぐす身を
もの思ふ人と人は知りけり

歌の意味
つらいものとも思い知らずに過ごしているこの身を、物思いをする人だと、人は思っていたのだ。
鑑賞
第三部 手習

 中将の歌に対する浮舟の返しである。自分は物思いをするような者ではないと言い、相手の呼びかけを正面から退けている。だが実際には、この身のつらさを思い知らないでいるというのは強がりであり、直後の場面では老尼たちのいびきの中で眠れぬ夜を明かし、生き延びてしまったわが身を嘆くことになる。

 相手の「もの思ふ人」をそのまま受け取り、否定の形で返す整った返歌である。「憂きものと思ひも知らで」は、つらいとさえ思い知らずにの意で、無感覚を装う言い方になっている。「人は知りけり」は、人はそう思っていたのかという発見の形で、他人からどう見られていたかを突き放して述べる。拒みながら傷を見せないという、この時期の浮舟の構えがよく出ている。

憂し:つらい。

思ひ知る:身にしみて悟る。

過ぐす:日を過ごす。

もの思ふ人:物思いに沈む人。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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