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岸遠く漕ぎ離るらむ海人舟に
乗り遅れじと急がるるかな

歌の意味
岸を遠く離れて漕ぎ出していく海人の舟に、乗り遅れまいと心が急がれることだ。
鑑賞
第三部 手習

 浮舟の出家を知った中将が、山荘へ贈ってきた歌である。世を離れていく相手を、岸を離れる舟にたとえ、自分も後を追って出家したいほどだと訴えている。浮舟はこれに返すが、その返しは相手の望みを退けるものであった。以後も中将の便りは続き、その執着は薫の姿を遠く映すものとして描かれる。

 「海人舟」は漁師の舟で、「海人」に「尼」を掛ける。「岸」は俗世の岸辺で、そこを離れることが出家をいう。「乗り遅れじ」は乗り遅れまいの意で、自分も同じ道を行きたいという訴えになっている。舟と岸という景で出家を語る型を用いながら、実際には引き止めたいという未練が透けて見える。

岸:俗世のたとえ。

漕ぎ離る:漕いで離れていく。

海人舟:漁師の舟。「尼」を掛ける。

乗り遅る:乗りそこねる。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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