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かきくらす野山の雪を眺めても
降りにしことぞ今日も悲しき

歌の意味
空を暗くして降る野山の雪を眺めても、過ぎ去った昔のことが、今日もまた悲しく思われる。
鑑賞
第三部 手習

 年が明け、薫二十八歳の春。小野の山荘は雪に埋もれ、訪れる人もない。尼となった浮舟は、少将の尼らとともに静かな日を送っていた。雪の降る日に妹尼と交わした四首の贈答の、その最初がこの一首である。宇治で過ごした日々も、身を投げた夜のことも、雪のうちにすべてが遠くなっている。

 「かきくらす」は空を暗くする意で、浮舟の巻でも用いられた語である。「降りにしこと」は「降る」と「古る」を掛け、降った雪と過ぎ去った過去とを重ねる。雪を眺める行為がそのまま追憶になるという構成で、季節の景と心のうちとが一語で結ばれている。出家しても過去が消えないことを、静かに述べた一首である。

かきくらす:空を暗くする。

野山:野と山。

降る:雪が降る。「古る」を掛ける。

今日も:今日もまた。
作者
紫式部
出典
源氏物語
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