尼衣変はれる身にやありし世の
形見に袖をかけて偲ばむ
- 歌の意味
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尼衣に変わったこの身であっても、かつての世の形見として、その袖にすがって偲ぼうか。
- 鑑賞
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第三部 手習
紀伊守の話を聞いた後、妹尼と語り合ううちに浮舟が詠んだ一首である。尼となった身であっても、薫が営もうとしている法事の場に何かを託して、過去を偲ぶことはできようかと思いめぐらしている。この後、薫は明石の中宮のもとで小宰相の君から僧都の話を聞き、浮舟の生存を知って横川へ向かう。手習の巻はここで閉じられる。
「尼衣」は出家した者の着る墨染の衣である。「変はれる身」は姿を変えた身、すなわち尼となった身をいう。「形見」は亡き人をしのぶよすがで、ここでは自らを死んだ者として扱う言い方になっている。「袖をかけて」は袖にすがる意で、衣の縁語として働く。生きているのに自分を形見の側に置くという倒錯が、この巻の浮舟の位置を言い当てている。
尼衣:出家した者の着る衣。
変はれる身:姿を変えた身。出家した身。
ありし世:かつての世。生前。
形見:亡き人をしのぶよすが。
袖をかく:袖にすがる。
- 作者
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紫式部
- 出典
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源氏物語
- 前の歌
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見し人は影も止まらぬ水の上に 落ち添ふ涙いとどせきあへず
- 次の歌
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法の師と尋ぬる道をしるべにて 思はぬ山に踏み惑ふかな