見ぬ人によそへて見つる梅の花
散りなん後のなぐさめぞなき
- 歌の意味
-
まだ見ぬあなたになぞらえて見ていた梅の花が、散ってしまった後は、心を慰めるものが何もない。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌上 48
詞書「梅花にそへて大弐三位につかはしける」
ここから贈答歌が二首続く。この歌は梅の花に添えて女性のもとへ贈られたもので、まだ会ったことのない相手を花になぞらえてきたと述べ、花が散った後の心細さを訴える。
作者の「権中納言定頼」は藤原定頼(九九五〜一〇四五)である。藤原公任の子で、権中納言に至った。相手の大弐三位は藤原賢子で、紫式部の娘である。大宰大弐の高階成章に嫁いだことからこの呼び名がある。
場面は梅の散るころ、場所は特定されない。
直接の契機は、梅の花を贈るのに添えて歌を詠み送ったことである。
この歌に対する大弐三位の返しが、次の第四十九首として置かれている。
初句「見ぬ人に」は、まだ会っていない人、の意である。当時は直接顔を合わせる前に文を交わすのが普通であり、この設定自体は珍しくない。
二句「よそへて見つる」の「よそふ」は、なぞらえる、なぞらえて見る意である。「つる」は完了の助動詞の連体形で、これまでそうしてきたことを示す。
三句「梅の花」で対象が定まる。
四句「散りなん後の」の「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ん」は推量の助動詞で、散ってしまうであろう後、の意である。まだ散っていない段階で先を見越している。
結句「なぐさめぞなき」は「ぞ」の係り結びで、「なき」の連体形が結びとなる。花が散れば慰めがなくなる、というのは、あなたに会えなければ心が慰まない、という訴えである。花を口実に相手へ会いたい気持ちを伝える構成になっている。
よそふ:なぞらえる。なぞらえて見る
なぐさめ:心を慰めるもの
- 作者
-
藤原定頼
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-