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梅散らす風も越えてや吹きつらん
薫れる雪の袖に乱るる

歌の意味
梅を散らす風が垣を越えて吹いてきたのだろうか。香りをもった雪が袖の上に乱れかかっている。
鑑賞
巻第一 春歌上 50

詞書「二月雪落衣といふことをよみ侍りける」
 梅の一連を結ぶ歌である。袖に散りかかる雪が梅の香を帯びていることから、梅を散らした風がここまで吹いてきたのだろうと推し量る。詞書の「二月雪落衣」は、二月の雪が衣に落ちる、の意で、その題によって詠まれた。
 作者の康資王母は伊勢大輔の娘で、父は高階成順である。康資王の母であることからこの呼び名がある。
 場面は二月、雪の降るころである。場所は特定されない。
 直接の契機は「二月雪落衣」の題による詠である。

 初句「梅散らす」は、梅を散らす、と風を修飾する形である。まだ見えていない梅の存在が、この一語で前提として置かれる。
 二句「風も越えてや」の「越えて」は、垣や山を越えて、の意である。「や」は疑問の係助詞で、結びの「らん」の連体形に係る。
 三句「吹きつらん」の「つ」は完了、「らん」は現在推量で、吹いてきたのだろう、と結ぶ。
 四句「薫れる雪の」がこの歌の眼目である。雪そのものが香るはずはなく、雪に混じった梅の花びらの香、あるいは風が運んできた香が雪に移ったものと解される。香る雪という言い方によって、雪と花の区別がつかない状態が示される。
 結句「袖に乱るる」は連体形による体言止めに近い結びで、袖の上に乱れ散るさまを言う。第二十八首以来くり返されてきた、雪と梅を見分けがたいものとして扱う趣向が、ここでは嗅覚を手がかりにして解かれており、一連の結びにふさわしい仕立てになっている。

かをる:香りが立つ
みだる:乱れ散る
作者
康資王母
出典
新古今和歌集
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