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難波潟霞まぬ波も霞みけり
映るも曇る朧月夜に

歌の意味
難波潟では、霞むはずのない波までも霞んでしまった。月の映る水面までも曇る朧月夜に。
鑑賞
巻第一 春歌上 57

詞書「百首歌たてまつりし時」
 朧月の一連の三首目で、海の上の朧月を詠む。空だけでなく水面までも曇るという捉え方をとる。詞書の「百首歌たてまつりし時」は正治二年の正治初度百首を指す。
 作者の源具親は源師光の子である。第四首の宮内卿は妹にあたる。
 場面は春の夜、場所は摂津国の歌枕である難波潟(現在の大阪市一帯の干潟)である。第二十六首の難波江と同じ土地である。
 直接の契機は百首歌の詠進である。

 初句「難波潟」で場所を掲げる。第二十六首が同じ土地の夕暮れを詠んだのに対し、こちらは夜の景である。
 二句「霞まぬ波も」は、霞むはずのない波までも、の意である。霞は空にかかるものであって水面のものではない、という前提が「ぬ」の打消に込められている。
 三句「霞みけり」の「けり」は詠嘆で、思いがけないことへの気づきを表す。
 四句「映るも曇る」は、月を映す水面までも曇る、の意である。空の月が朧であれば、水に映る月も朧になる。当然のことを改めて言い立てることで、朧が及ぶ範囲の広さが示される。
 結句「朧月夜に」は体言止めで、原因にあたる語を最後に据える倒置である。第五十五首が朧月そのものを讃えたのに対し、この歌は朧月が周囲に及ぼす効果を詠んでおり、一連の中で扱いが進んでいる。

なにはがた:摂津国の歌枕。現在の大阪市一帯にあった干潟
うつる:水面などに映る
作者
源具親
出典
新古今和歌集
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