古典和歌stream

春雨の降りそめしより青柳の
糸の緑ぞ色まさりける

歌の意味
春雨が降りはじめてから、青柳の糸のような枝の緑が、いっそう色を増したことだ。
鑑賞
巻第一 春歌上 68

詞書「延喜御時屏風に」
 春雨から柳へ移る位置に置かれる歌である。雨が柳の緑を深めるという捉え方で、春雨の一連と柳の一連をつなぐ。詞書によれば醍醐天皇の御代の屏風歌で、屏風に描かれた景に添えて詠まれた。
 作者の凡河内躬恒は本巻では第二十二首に続く二度目の登場となる。『古今和歌集』の撰者の一人である。
 場面は春雨の降るころ、場所は柳のある水辺である。
 直接の契機は屏風歌としての詠進である。

 初句
二句「春雨の降りそめしより」の「そむ」は〜しはじめる意で、「し」は過去の助動詞の連体形である。降りはじめた時点を起点として、そこから今までの変化が語られる。
 三句
四句「青柳の糸の」は、柳の細く垂れた枝を糸に見立てたものである。柳を糸に喩える言い方は古くからあり、以後の柳の歌でもくり返される。
 四句「緑ぞ」の「ぞ」は係助詞で、結句の「ける」の連体形が結びとなる。
 結句「色まさりける」は、色が濃くなった、の意で、「けり」の詠嘆が気づきを添える。第六十六首が雨に染まらない緑を詠んだのに対し、この歌は雨によって濃くなる緑を詠む。染まるものと染まらないものが並べられている。
 第六十五首の伊勢の歌が推量で山を染めるとしたのに対し、この歌は目の前の柳について色が増したと断じており、同じ主題が推量から確認へと進んでいる。

そむ:〜しはじめる
あをやぎ:芽吹いた柳。細く垂れた枝を糸に見立てる
まさる:程度が増す。濃くなる
作者
凡河内躬恒
出典
新古今和歌集
その他の歌