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うち靡き春は来にけり青柳の
影踏む道に人のやすらふ

歌の意味
なびくように春が来たことだ。青柳の影を踏む道に、人が立ち止まってくつろいでいる。
鑑賞
巻第一 春歌上 69

詞書「題しらず」
 ここから柳を主題とする一連が始まる。この歌は柳の下に人が足を止めるさまを描き、春の訪れを人の動きによって示す。詞書は「題しらず」で、詠作の事情は伝わっていない。
 作者の「大宰大弐高遠」は藤原高遠である。平安時代中期の歌人で、大宰大弐を務めた。管絃にも通じていた。
 場面は柳の芽吹くころ、場所は柳の並ぶ道である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句「うち靡き」は、なびくように、の意で、「うち」は語調を整える接頭語である。柳の枝がなびくさまと、春の気配が広がるさまとが、この一語に重なる。
 二句「春は来にけり」は本巻の第一首
第四首
第八首にも見える結び方で、ここでは二句に置かれている。言い切りを早い位置に据え、下の句で具体を述べる構成である。
 三句
四句「青柳の影踏む道に」は、柳の影が落ちた道、の意である。影を踏むという言い方によって、地面に落ちた枝の形までが目に浮かぶ。
 結句「人のやすらふ」の「やすらふ」は、立ち止まる、ためらう、休むの意である。春が来たことを、季節の景物ではなく人の振る舞いによって示している点にこの歌の特色がある。
 柳を糸に喩える前歌に対し、この歌は影という別の面から柳を捉えており、一連の中で扱いを変えている。

うちなびく:なびく。「うち」は語調を整える接頭語
やすらふ:立ち止まる。ためらう。休む
作者
藤原高遠
出典
新古今和歌集
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