- 歌の意味
-
み吉野の大川のほとりの古い柳は、まだ影も見えないけれども、春らしくなったことだ。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌上 70
詞書は前の歌に続き「題しらず」
柳の一連の二首目である。前歌が柳の影を踏む道を詠んだのを受け、この歌はまだ影を落とすほど茂っていない古柳を詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
作者の輔仁親王(一〇七三〜一一一九)は後三条天皇の第三皇子である。皇位につくことはなかった。
場面は早春、場所は大和国の吉野を流れる大川のほとりである。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
初句
二句「み吉野の大川辺の」は、巻頭の良経歌と同じ吉野を舞台とする。「大川」は吉野川を指す。
三句「古柳」は年を経た柳である。若々しい「青柳」と対になる語で、前歌の青柳から古柳へと視点が移っている。
四句「影こそ見えね」の「こそ」は係助詞、「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形で、係り結びが結んだうえで下に続くため逆接となる。第四首の宮内卿歌の「跡こそ見えね」と同じ形であり、二首が呼応する。
結句「春めきにけり」の「春めく」は春らしくなる意である。まだ葉が茂らず影もできないのに、それでも春らしい、という捉え方で、目に見える徴のないところに季節を認めている。
第四首が雪に消された足跡から春を言い当てたのと同じ構造であり、見えないものによって季節を示す型が、巻の前半と後半で反復されている。
おほかは:大きな川。ここでは吉野川
ふるやなぎ:年を経た柳
はるめく:春らしくなる
- 作者
-
輔仁親王
- 出典
-
新古今和歌集
- その他の歌
-