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焼かずとも草は萌えなん春日野を
ただ春の日に任せたらなん

歌の意味
焼かなくても草は萌え出るだろう。春日野を、ただ春の日ざしに任せておいてほしい。
鑑賞
巻第一 春歌上 78

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 野の草の一連の二首目である。春に野を焼く習わしを踏まえ、焼かなくてもよいと詠む。詞書は前歌に続いて「題しらず」である。
 作者の壬生忠見は本巻では第十二首に続く二度目の登場となる。壬生忠岑の子で、三十六歌仙の一人である。
 場面は野焼きの行われる早春、場所は大和国の歌枕である春日野である。第十首から第十三首の若菜の一連と同じ土地である。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。
 春の野焼きは、枯草を焼いて新しい草の生えるのを助ける習わしで、古くから行われていた。

 初句「焼かずとも」の「とも」は逆接の仮定条件で、焼かなくても、の意である。野焼きという行為を、まず打ち消す形から歌が始まる。
 二句「草は萌えなん」の「なん」は「な」が完了の助動詞「ぬ」の未然形、「ん」が推量の助動詞で、きっと萌えるだろう、の意になる。人の手を借りずとも草は生えるという確信が示される。
 三句「春日野を」で場所が定まる。
 四句
五句「ただ春の日に任せたらなん」の「なん」は、二句の「なん」とは異なり、他に対する願望を表す終助詞である。同じ音を句末に重ねながら働きを変えており、そこに一首の仕掛けがある。「春日」の語が「春日野」と響き合う点にも留意される。
 前歌が人の手の入らない荒地に芽を見いだしたのに対し、この歌は人の手を加えるなと言う。二首とも、自然に任せることを主題としており、並べて置かれている。

やく:野焼きをする。枯草を焼く
もゆ:草木が芽を出す
なむ:他に対する願望を表す終助詞。〜してほしい
作者
壬生忠見
出典
新古今和歌集
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