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行かむ人来ん人しのべ春霞
たつたの山の初桜花

歌の意味
これから行く人も、これから来る人も心にとどめよ。春霞の立つ立田の山の、初桜の花を。
鑑賞
巻第一 春歌上 85

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 桜の一連の七首目である。ここから立田山を舞台とする歌が続く。この歌は峠を越えていく人に、初めて咲いた桜を心にとどめよと呼びかける。原文では詞書が改めて記されていない。
 作者の「中納言家持」は大伴家持で、本巻では第二十首に続く二度目の登場となる。
 場面は桜の咲きはじめるころ、場所は大和国と河内国の境にある立田山である。都と難波を結ぶ道が通り、往来の多い場所であった。
 詠まれた直接の契機は伝わらない。

 初句
二句「行かむ人来ん人」は、これから行く人と、これから来る人、の意である。「む」「ん」はいずれも推量
意志の助動詞で、同じ形を重ねて往来する人すべてを言い尽くしている。
 二句「しのべ」は命令形で、心にとどめよ、の意である。道行く人への呼びかけとして歌が立てられている。
 三句「春霞」は「立つ」を導き、四句の「立田」へ掛かる。霞が立つという語と地名の立田が同音で結ばれている。
 結句「初桜花」は体言止めである。「初」は、その年に初めて咲いた、の意である。
 往来の場所を舞台に選んだことで、呼びかけの相手が不特定多数となる。個人的な感慨ではなく、道に立てた標のような性格をもつ歌である。

しのぶ:心にとどめる。思い浮かべる
たつた:大和国と河内国の境にある山。「春霞立つ」から掛けられる
はつざくら:その年に初めて咲いた桜
作者
大伴家持
出典
新古今和歌集
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