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岩根踏み重なる山を分け捨てて
花もいくへの跡の白雲

歌の意味
岩を踏み、重なり合う山を分け入っては後にして来て、花も幾重、その跡には白雲が幾重にも見える。
鑑賞
巻第一 春歌上 93

詞書「和歌所歌合に羇旅花といふことを」
 桜の一連の十五首目である。詞書の「羇旅花」は、旅先の花、の意で、その題によって詠まれた。山を越えてきた旅の途中で、越えてきた道を振り返る場面である。
 作者の藤原雅経は本巻では第七十四首に続く二度目の登場となる。『新古今和歌集』の撰者の一人である。
 場面は桜の咲くころ、場所は山越えの道である。
 直接の契機は和歌所の歌合への出詠である。

 初句「岩根踏み」は岩を踏んで進む、の意で、山道の険しさが具体的に示される。
 二句「重なる山を」は幾重にも連なる山々である。
 三句「分け捨てて」は、分け入っては後に置いてくる、の意である。「捨つ」を用いることで、越えてきた山への未練のなさが出る一方、下の句で振り返る動作と対比される。
 四句「花もいくへの」は、花もまた幾重にも、の意である。山の重なりと花の重なりが同じ語で受けられている。
 結句「跡の白雲」は体言止めである。「跡」は通ってきた後方をいう。振り返ると、越えてきた山々に白雲がかかっており、それが花なのか雲なのか判じがたい。第八十七首以来の白雲と花の見立てが、旅の視点で用いられている。

いはね:地についた岩。岩の根元
わけすつ:分け入って後に置いてくる
いくへ:幾重。いくつも重なること
作者
藤原雅経
出典
新古今和歌集
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