花の香に衣は深くなりにけり
木の下陰の風のまにまに
- 歌の意味
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花の香で衣は深く染まったことだ。木の下陰を吹く風のなすがままに。
- 鑑賞
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巻第二 春歌下 111
詞書は前の歌に続き「題しらず」
ここから花の香を主題とする歌が三首続く。この歌はその一首目で、木の下に立つうちに衣が花の香に染まることを詠む。原文では詞書が改めて記されていない。
作者の紀貫之は本巻では第百八首に続く二度目の登場となる。
場面は桜の咲くころ、場所は花の木の下である。
詠まれた直接の契機は伝わらない。
初句「花の香に」の「に」は原因を表す。
二句「衣は深く」の「深し」は、色や香が濃く染み込むさまをいう。染色の語を香に転用しており、目に見えないものが染まるという捉え方になっている。
三句「なりにけり」の「けり」は詠嘆で、いつのまにかそうなっていたという気づきを添える。
四句「木の下陰の」は木の下の日陰である。花の下に立ち続けていた時間が、この一語で示される。
結句「風のまにまに」は、風のなすがままに、の意である。自分から香を移したのではなく、風に任せているうちに染まった、という受け身の姿勢が示される。巻第一の第四十四首で定家が袖に移った梅の香と月光を争わせたのに対し、この歌は染まる過程そのものを詠んでおり、香を扱う一連の入口にふさわしい。
ふかし:色や香が濃く染み込んでいる
したかげ:木の下の日陰
まにまに:なすがままに。〜にしたがって
- 作者
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紀貫之
- 出典
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新古今和歌集
- その他の歌
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