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風通ふ寝覚めの袖の花の香に
かをる枕の春の夜の夢

歌の意味
風の通う、目覚めた折の袖の花の香に薫っている枕の、春の夜の夢よ。
鑑賞
巻第二 春歌下 112

詞書「千五百番歌合に」
 花の香の二首目である。前歌が昼の木の下で衣に香が移ることを詠んだのに対し、この歌は夜の寝覚めの床で香に包まれることを詠む。詞書によれば千五百番歌合に出された歌である。
 作者の「皇太后宮大夫俊成女」は藤原俊成の孫で、その養女となった女性である。巻第一では第四十七首に現れた。
 場面は春の夜、場所は寝所である。
 直接の契機は歌合への出詠である。
 この歌は俊成女の代表作として広く知られ、後世の歌論でもたびたび取り上げられた。

 初句「風通ふ」は、風が通ってくる、の意である。戸口や隙間から風が入る寝所であることが示され、外の花と内の床がつながる。
 二句「寝覚めの袖の」は、目を覚ました時の袖、の意である。「寝覚め」は夜中に目が覚めることをいい、和歌では物思いと結び付く語である。
 三句「花の香に」で香が現れ、四句「かをる枕の」に係る。袖から枕へ、香の移る先が移動していく。
 結句「春の夜の夢」は体言止めである。この結句は巻第一の第三十八首で定家が用いた「春の夜の夢の浮橋」に通じ、また「春の夜の月」として巻第一に四度現れた形の変奏でもある。
 「風」「袖」「枕」「夢」と、体言を助詞「の」で次々につないでいく作りで、文の切れ目がない。輪郭のはっきりしない、香と夢の入り混じった状態が、構文そのものによって示されている。

かよふ:行き来する。通ってくる
ねざめ:夜中に目が覚めること
かをる:香りが立つ
作者
藤原俊成女
出典
新古今和歌集
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